総会・議長の決裁権

総会

Q.私の住むマンションの管理規約は、普通決議の場合について、「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決し、可否同数の場合には、議長の決するところによる。」と定めています。
 この規定については、区分所有者の間でも様々な意見があり、どのように扱ってよいのかよく分かりません。この規定は、議長の議決権をどのように扱う趣旨なのでしょうか。

  1.  標準管理規約が平成16年1月に改定される前の中高層共同住宅標準管理規約45条2項には、あなたのマンションの管理規約と同様に、普通決議の場合の「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決し、可否同数の場合には、議長の決するところによる。」と規定されていました。
     その趣旨は、議長は最初の採決には加わらず、可否同数のときに初めて議決権を行使するというものです。
     しかし、議決権の割合が区分所有者によって異なる管理組合の決議方法としては、不合理な結果を招く場合もありますので、できるだけ速やかに、現行の標準管理規約第47条2項と同様に「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。」という規定に改正することをお勧めします。
<解説>

 1 「可否同数の場合には、議長の決するところによる」と規定された趣旨 

 平成16年1月に標準管理規約が改定される前の中高層共同住宅標準管理規約45条2項では、普通決議の場合の「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決し、可否同数の場合には、議長の決するところによる。」(以下「旧規定」といいます。)と規定されていました。そのため、平成16年1月より前に設立された管理組合の中には、管理規約の改正作業が進んでおらず、現在も同様の規定のままになっているという管理組合もあると思われます。

 この旧規定の意味するところは、議長は、最初の採決には加わらず、最初の採決の結果、可否同数の結果となった場合に初めて自らの議決権を行使して可否を決するというものでした。

 旧規定がこのように定められた趣旨は、議長が最初の決議に加わらないことにより、審議の中立性・公正性を確保するということにあったようです。

2 旧規定の難点

 しかし、あなたの管理組合でも様々な意見があるように、旧規定は、議長が最初の採決にも加わり、その上で、可否同数であった場合には、議長が可否を決定するという趣旨(議長だけが重複して議決権を行使するというもの)であるとの誤解を招く規定でした。

 また、極端な例を挙げれば、議決権総数が100あるとして、議長がそのうちの99の議決権を有しているような場合、議長は最初の採決に加わることができませんので、残りの1の議決権で可否が決定されてしまうという、多数決原理に完全に反する、全く不合理な結果を招く規定でもあるわけです。

3 標準管理規約での改定

 そのため、平成16年1月に標準管理規約が改定される際に、第47条2項として「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。」という規定に改められ、議長も他の区分所有者と同様に最初の採決から議決権を行使することができるものとされました。

 一方で、管理規約の改定には相当な労力と費用を要しますので、平成16年1月以降も改定がなされず、現在も旧規定のままとなっている管理組合も多く存在するというのが実情ではないかと思われます。

4 旧規定の有効性

 では、管理規約が旧規定のままである場合、旧規定は有効と言えるのでしょうか?

(1)会議体の一般的なルール

 もともと、旧規定は会議体のルールとして昔から採用されているものとされています。
 例えば、日本国憲法第56条第2項は、「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。」と規定しており、大日本帝国憲法にも同様の規定がおかれていました。また、地方自治法第116条にも同様の規定が置かれています。

 このように、日本国憲法や他の法令等で採用されている議決方法であるとすれば、旧規定が直ちに無効であると断定することは難しいとも考えられます。

(2)総会決議のルールとして採用すべきか

 しかし、一方で、管理組合の場合には、国会や地方議会等のように1人1票ではなく、議決権割合はそもそも均等ではありません。また、議長も議決権を有する区分所有者の一人であるのが通常ですから、その議決権行使を制限するのであれば、合理的な制約理由が必要であり、合理的な制約理由がなければ、議長の議決権行使を不当に制限するものとして、区分所有者間の衡平性(区分所有法第30条3項)に反すると考える余地もあるのではないかと思われます。

 実際にも、多くの管理組合が、現行の標準管理規約第47条2項を適用して総会の議事を執り行っていることからしても、(旧規定が想定した)審議の中立性や公正性に問題が生じているということはないものと考えられます。

 また、旧規定は可否同数となった場合に議長が初めて議決権を行使するという規定ですから、普通決議を想定した規定であり、特別決議(4分の3以上の賛成が必要)には適用されないのではないかと考えられます。実際、議長が4分の1を超える議決権を有するような場合、議長が議決権を行使できなければ、特別決議が常に否決されることになりますので、旧規定においても、特別決議の場合には最初の採決から議長が議決権を行使できるものと考えざるを得ないのではないでしょうか。とすれば(特別決議の場合には、議長も議決権を有するとすれば)、普通決議よりも重大な事項を決定する特別決議のほうが審議の中立性や公正性を重視されるべきであるにもかかわらず、この点が考慮されないという、逆転の状況が生み出されてしまうわけです。

 このように考えると、議長の議決権行使を制限するほどの合理性が認められるのか、疑問を感じざるを得ません。

 以上のことから、旧規定については、無効であると断じることはできませんが、混乱を避けるためにも、できるだけ速やかに、現行の標準管理規約第47条2項と同様に「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。」という規定に改正するほうがよいでしょう。

ちょっと深掘り

<白紙委任状との関係>

 委任状に「代理人の氏名を記載しない委任状は議長に一任」と印字されている管理組合も多いものと思われます。このような場合、旧規定の下で、議長は、委任状を提出した組合員の代理人として、議決権を行使できるというべきでしょうか。

 もし、旧規定の解釈として、「議長は自らの議決権は可否同数でなければ行使し得ないが、委任受けた議決権は行使し得る」とするならば、首尾一貫しない解釈です。審議の中立性・公正性を重視するのであれば、議長は可否同数の結果となるまでは賛否の意見を述べることは許されず、中立の姿勢に徹しなければならないはずであり、「代理人の氏名を記載しない委任状は議長に一任」と印字されている白紙委任状や議長を代理人とする委任状による議決権行使もできないと考えるのが自然でしょう。このような状況は、多くの管理組合で現実に生じ得るものであり、旧規定を維持すると、白紙委任状の扱いについて、総会での議決の際に混乱が生じることは否めません。

 このような観点からも、旧規定については、現行の標準管理規約第47条2項と同様に「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。」という規定に改正するほうが望ましいと考えられます。

以上