理事会の議長~特別利害関係のある理事長

理事会

Q.私のマンションの管理規約では、「理事会の議長は、理事長が務める。」と定められています。このたび、理事長解職の決議を理事会で行うことになったのですが、その際の議長は誰が務めるべきでしょうか。
 なお、管理規約には、「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」との規定があります。

A.設問の場合、理事長解職の議案において理事長は特別利害関係を有する者に該当しますので、議長の資格を喪失し、理事会において当該理事長以外の理事から議長を選任することになると解されます。
 なお、管理規約上、これを明確にするために、標準管理規約に準拠した管理規約であれば、第51条第3項「理事会の議長は、理事長が務める。」との規定の後に「理事長が理事会決議について特別な利害関係を有する場合には、特別な利害関係を有しない理事の中から理事会決議により議長を選任する。」との規定を置いておくことも有用でしょう。

<解説>

 標準管理規約(単棟型)第51条第3項は「理事会の議長は、理事長が務める。」と規定し、理事長が当該議案について特別利害関係人となる場合に、理事会の議長を誰が務めるかについて、特別な規定を置いていません。
 あなたのマンションの管理規約が、これと同内容である場合には、管理規約で「理事会の議長は、理事長が務める。」と規定されているのであれば、理事長解任の決議(理事長が特別利害関係を持つ議案)についても、理事長が議長を務めることになるという考え方が一見成り立ちそうです。

 しかし、標準管理規約(単棟型)第53条第3項と同様に、あなたのマンションの管理規約には、「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」との規定もあるとのことです。
 この規定は、取締役会における特別利害関係を有する取締役の議決参加について定める会社法369条第2項(改正前商法第260条の2第2項)と同様の規定であり、その解釈として、議長は議決権のある者が務めるべきであり、議決権のない者には議事を主宰する権限を認めることはできないと一般的に解されています(東京高裁平成8年2月8日判決など)。

 実際にも、このような場合に理事長が議長を務めれば、自らの正当性のみを延々と述べて、議案が否決されるように働きかけるような議事進行が行われ、審議の公正を確保することが困難となるような場面も想定されます。

 このように、管理規約で「理事会の議長は、理事長が務める。」と規定されていても、「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」との規定がある場合には、特別利害関係のある理事長は議決に加わることができず、従って、議長として議事を主宰することもできないものとして、理事会において、議決権を有する他の理事の中から、議長を選任することになると解されます。

 しかし、「理事会の議長は、理事長が務める。」と規定されていることからすれば、その規定に従うべきであると主張する方々も当然存在するでしょうし、それによる混乱も予想されます。
 そのため、標準管理規約であれば第51条第3項「理事会の議長は、理事長が務める。」という規定の後に「理事長が理事会決議について特別な利害関係を有する場合には、特別な利害関係を有しない理事の中から理事会決議により議長を選任する。」との規定を置いておくことも有用でしょう。

<チェック!ちょっと深掘り>

 設問の場合と異なり、管理規約で「理事会の議長は、理事長が務める。」と規定されている一方で、「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」との規定がないという場合には、どうなるのでしょうか?

 実際に、標準管理規約(単棟型)第53条第3項の「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」という規定は、平成28年3月の改正により初めて盛り込まれたものであるため、現在もこの規定が盛り込まれていない管理規約は非常に多いものと思われます。

 標準管理規約(単棟型)第53条第3項の規定と同様の規定がない場合について、①このような規定がない以上、特別利害関係を有する理事も議決権行使を制限されることはなく、議長を務めることもできるという考え方、②このような規定がなくとも、特別利害関係を有する理事には議決権が認められず、従って、議長を務めることができないという考え方の両説が考えられます。

 これは、標準管理規約(単棟型)第53条第3項の規定を①創設規定(新しい法律関係を創設する規定)とみるか、②確認規定(既存の法律又は法理により既に設定されている法律関係について、念のため確認的に規定するもの)とみるかによる差異と言えます。

 この2説のうち、どちらの立場を採用するのかについては、以下のように考えることができるものと思われます。
 理事と管理組合との間には、委任契約あるいはこれと類似する法律関係にあり、理事は善管注意義務を負い、あるいは誠実義務を負っています(標準管理規約第37条第1項)。そのため、理事会における理事の議決権は善管注意義務あるいは誠実義務に基づき管理組合のために行使されなければならず、理事会で自己の利益のために議決権を行使することは許されないものと言わなければなりません。また、委任契約あるいはこれと類似する法律関係の趣旨からしても、公正な議決権行使を期待できないような特別な利害関係を有する議案についての議決権行使が認められると解することはできないものと思料します。そのため、標準管理規約(単棟型)第53条第3項の規定は②確認規定であると解すべきでしょう。

 従って、あなたのマンションの管理規約に、標準管理規約(単棟型)第53条第3項「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」という規定がなくとも、特別利害関係を有する理事長には議決権が認められず、従って、議長を務めることもできないものというべきです。
 
 但し、解釈の分かれ得るところでもあると思われますので、標準管理規約(単棟型)第53条第3項と同様に「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」という規定を盛り込んでおくことをお勧めします。