監事の職務

監事

Q. 先日、私の住むマンションで管理組合の定時総会が行われ、私は監事に選任されました。監事の職務内容について教えてください。

A. 主として、監事の職務は、監査の実施とその結果の総会報告ということになります。
 これらの職責を果たすためにも、理事会に出席し、必要に応じて、意見を述べなければなりません。 
 また、管理組合の業務の執行あるいは財産の状況について不正があると認めるときには、総会や理事会において、その旨を報告しなければなりません。
その報告のために必要であれば、管理規約の規定に従った手続を経て、臨時総会や理事会を招集することができる場合もあります。
 その他にも、管理組合と理事長との間で利益が相反する事項について、理事長に代わって、監事が管理組合を代表することもあります。

<解説>

 「監査」とは、簡単に言えば、監督し、検査するということです。
 もう少し詳しく言うと、遵守すべき法令や内部規程などの規準に照らして、業務や成果物がそれらに則っているかどうかの証拠を収集し、その証拠に基づいて、監査対象の有効性を利害関係者に合理的に保証することです。

1  監査の内容

 管理組合の監事の行う監査は、「業務監査」と「会計監査」の2つに分かれます。

 業務監査は、管理組合の業務の執行が法令、管理規約、使用細則などの規則、総会決議もしくは理事会決議に従い、適正に行われているか等を監査するものです。
 業務監査を適正に行うためには、区分所有法などの法令、管理規約、使用細則等の規則を知り、また、その正確な趣旨を把握することが必要となります。

 会計監査は、収支計算書及び貸借対照表が、法令、管理規約及び収支予算書に従って作成され、管理組合の収支及び財産の状況を正しく反映しているかを監査するものです。
 会計監査については、標準管理規約は予算準拠主義(管理組合の収入及び支出は、予算に基づいて行うとの建前)を採用していますので、標準管理規約と同様の規定であれば、実際の収支が、総会で決議された予算案に基づいているか、収支報告書や貸借対照表等の会計報告書の記載が請求書、領収書や預金通帳等の帳票類と一致し、正確に反映されているか等を監査することになります。

 いずれの監査も専門的な知識が必要となることがありますので、場合によっては、弁護士やマンション管理士と言ったマンション管理の専門家やマンション管理センター等に相談することも検討すべきです。

2 理事会への出席・報告

(1)理事会に出席して意見を述べる
 監査を実施するためには、管理組合の業務の執行や財産の状況が実際にどのようになされているかを知る必要があります。
 そのため、理事会が開催される場合には、必ず理事会に出席して、理事会における審議に立ち会うことが必要です。その上で、管理組合の業務の執行や財産の状況が法令、管理規約、使用細則などの規則、総会決議もしくは理事会決議に従って適正に行われていない、あるいは著しく不当な事実があると判断される場合(以下まとめて「不正が認められる場合」といいます。)には、理事会において忌憚のない意見を述べるべきです(注1)

(2)不正が認められる場合の報告

 不正が認められる場合には、遅滞なく理事会において報告すべできです。
 なお、平成28年3月の標準管理規約の改正により、第41条に第6項(監事の理事会招集請求)及び第7項(監事の理事会招集権)が盛り込まれています。あなたの管理組合の管理規約にも同様の規定が盛り込まれている場合には、不正を報告するために理事会の開催を理事長に請求し、それでも開催されない場合には自ら理事会を招集することができます。

 それでも、理事会で自浄作用が働かない場合、あるいは、そもそも自浄作用が働かないと判断される場合には、自ら臨時総会を開催して、報告することになります。

3 監事が管理組合(法人)を代表する場合

 ご質問の管理組合が管理組合法人であり、区分所有法第51条の規定(管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する旨の規定)と矛盾するような規定が管理規約にない場合や、管理組合法人ではないが、管理規約の中に、平成28年3月の標準管理規約の改正により盛り込まれた第38条第6項「管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表する。」と同様の規定がある場合に、監事が理事長に代わって、管理組合(法人)を代表することもあります。

(注1)但し、別項「監事はどのような場合に総会を招集することができるか」においても述べておりますように、監事の職務は業務監査及び会計監査であり、理事会での議決権はなく、業務執行権もありません。ですから、不正を指摘してそれを正すことは職務の範囲内ですが、「不正」とまでは言えない事項について「こちらの方がよいのではないか?」という単なる意見を述べる権限はありませんので、この点については注意が必要です。監事は、いわばアンパイアであるからこそプレイヤーを兼ねることはできないのが原則です。

<チェック!ちょっと深掘り>

 ところで、平成28年3月の標準管理規約の改正により盛り込まれた第38条第6項「管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表する。」と同様の規定がある場合、実際に利益相反する事項について、監事と理事長以外の理事のいずれが、どのような手続を経て管理組合を代表することになるのでしょうか?

 標準管理規約第38条第6項には、どのような手続を経て、監事又は理事長以外の理事が管理組合を代表するのかについての直接規定をおいていません。また、総会議決事項(第48条)、理事会議決事項(第54条)のいずれにも明示的な規定はありません。

 これについては、大きく分けると、次のような二つの考え方が成り立ち得るものと思料します。

  1. 理事会議決事項として明記されていない以上、総会議決事項であるとする考え方
  2. そもそも代表権を有する理事長の選任権限は理事会にある以上、理事長に代わって代表権を行使する者を選任する権限も理事会にあるとする考え方

 どのような手続を経て理事長に代わって代表権を行使する者を選任するのかについては、解釈の余地を残さないよう、例えば、「理事会決議により」等と規約で明記しておくべきでしょう。
 標準管理規約は、いずれの解釈の余地も残すもので、不十分な規定であると言えるでしょう。

以上