Q.私は、所有する専有部分を賃貸しています。
賃借人の同居者である息子が、マンションの共有部分に暴走族仲間を集めてたむろし、集合ポストを壊したり、共用部分の壁にペンキでイタズラ書きをしたりするなど、他の区分所有者や入居者に迷惑を掛ける行為を繰り返していました。これまで、理事長から私に迷惑行為を止めさせるように再三の注意があり、私から賃借人にやめるよう伝えましたが、一向に改められず、今般、理事長から私宛に損害賠償請求がありました。
私は、これに応じる義務がありますか。
A.損害賠償義務を負うものと考えられます。
<解説>
1 区分所有法第6条第1項は次のように定めています。
「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」
また、標準管理規約第18条においては、
「対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。」
と規定し、使用細則では、マンション内で他の区分所有者や占有者の迷惑となる行為が禁止されているのが一般です。
ですから、区分所有者は、区分所有法第6条1項等により、他の区分所有者や占有者の迷惑となる行為、すなわち「共同利益背反行為」をしてはならないとの法律上及び管理規約上の義務を負っています。
従って、区分所有者が迷惑行為をしてはならないことは、法令や管理規約上、明確です。
2 しかし、ご質問の案件は、区分所有者であるあなた自身が迷惑行為を繰り返したわけではなく、その行為者は賃借人の同居者(息子)です。
区分所有者は、賃借人あるいはその同居者の行為にまで責任を負うのでしょうか?
この点、標準管理規約第19条1項には次のような定めが置かれています。
「区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項をその第三者に遵守させなければならない。」
管理規約に、これと同様の規定があれば、区分所有者は賃借人に使用細則を遵守させる義務を負っていることになります。なお、賃借人の同居人は賃借人の履行補助者として賃借人と同視し得ると考えられていますので、やはり、区分所有者は賃借人の同居者にも使用細則を遵守させる義務を負っていることになります。
3 ご質問の案件では、区分所有者であるあなたは、理事長から再三にわたって迷惑行為を止めさせるように注意が繰り返されてきたとのことですが、あなたは止めるように伝えるのみで、賃貸借契約の解除をし、またはその予告を行うこともせずに、賃借人の同居人の迷惑行為を放置していたものと評価されます。すなわち、法律上及び管理規約上の義務を順守したとは言い難い状況です。
ですから、法律上及び管理規約上の義務の不履行として債務不履行責任を負うこととなります。
また、過失により法律上及び管理規約上の注意義務に違反したとして不法行為責任を負うことになるものと考えられます。
以上のことから、あなたは、債務不履行及び不法行為により、賃借人と同居する息子が行った損壊行為による損害を賠償すべき義務を負うものと考えられます。
<チェック!ちょっと深掘り>
区分所有者であるあなたが賃借人の同居者(息子)が迷惑行為に気づかず、理事長からも、これに対する一切の連絡がないまま、賃借人の同居者(息子)が迷惑行為を繰り返し、結局、損壊行為等に至ったという場合でも、損害賠償責任を負うのでしょうか。
先ほども述べましたが、区分所有法第6条1項等により、あなた自身が他の区分所有者や占有者の迷惑となる行為、すなわち共同利益背反行為をしてはならないとの法律上及び管理規約上の義務を負っています。
そして、他の区分所有者等との関係においては、賃借人及びその同居人はあなたが負う上記義務の履行補助者であり、履行補助者の故意過失はあなたの故意過失と信義則上同視し得るものと考えられますので、あなた自身も債務不履行責任(不法行為責任は負わないと考えられます)に基づく損害賠償責任を免れないものと考えられます(宮崎地方裁判所平成24年11月12日判決)。
但し、あなたが管理組合に対して支払った損害賠償金については、賃借人及び賃借人の同居者(息子)に対して求償(請求)することは当然できるものと考えられます。
このように、専有部分を賃貸するということは家賃収入が得られるという利益が期待できる半面で、賃借人やその同居人の迷惑行為にも責任を負うというリスクをも負担することになりますので、そのリスクを十分に理解した上で、賃貸することが必要です。
そのため、締結する賃貸借契約書には、他の区分所有者や占有者の迷惑となる行為、すなわち共同利益背反行為をしてはならないこと、これに違反すれば即座に解除できることを明記するなどして予防しておくことも重要でしょう。

