Q. 理事会決議で理事長を解職する場合、対象となる理事には議決権はありますか。
A. 議決権はないと考えてよいでしょう。
<解説>
理事会決議で理事長を解職する場合、当該理事長は特別な利害関係を有すると解してよいでしょう。
あなたのマンションの管理規約に、標準管理規約(単棟型)第53条第3項と同様に、「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」との規定があれば、特別な利害関係を有する理事長には議決権がないということになります。
では、このような規定がない場合はどうでしょうか?(注1)
このような場合については、次の2説が考えられるところです。
①このような規定がない以上、特別利害関係を有する理事も議決権行使を制限されることはないという考え方
②このような規定がなくとも、特別利害関係を有する理事には議決権が認められないという考え方
以上の両説は、標準管理規約(単棟型)第53条第3項の規定をどのようにみるかによる差異と言えます。
すなわち、①説は、創設規定(新しい法律関係を創設する規定)とみる考え方、②説は、確認規定(既存の法律又は法理により既に設定されている法律関係について、念のため確認的に規定するもの)とみる考え方です。
この2説のどちらの立場を採用すべきかについては、以下のように考えることができます。
理事と管理組合との間には、委任契約あるいは委任契約類似の法律関係にあり、理事は善管注意義務を負い、あるいは誠実義務を負っています(標準管理規約第37条第1項)。そのため、理事会における理事の議決権は善管注意義務あるいは誠実義務に基づき管理組合のために行使されなければならず、理事会で自己の利益のために議決権を行使することは許されないものと言わなければなりません。また、委任契約あるいはこれに類似する法律関係の趣旨からしても、公正な議決権行使を期待できないような特別な利害関係を有する議案についての議決権行使が認められると解することはできないものと考えられます。
以上のことから、標準管理規約(単棟型)第53条第3項の規定は、②確認規定であると解すべきでしょう。
従って、あなたのマンションの管理規約に、標準管理規約(単棟型)第53条第3項「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」という規定がなくとも、特別利害関係を有する理事長には議決権が認められないものというべきです。
但し、解釈の分かれ得るところでもあると思われますので、標準管理規約(単棟型)第53条第3項と同様に「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」という規定を盛り込んでおくことをお勧めします。
(注1) 標準管理規約(単棟型)第53条第3項の「理事会決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。」という規定は、平成28年3月の改正により初めて盛り込まれたものであるため、現在もこの規定が盛り込まれていない管理規約は非常に多いものと思われます。
<チェック!ちょっと深掘り>
ところで、理事会決議の対象となる議案について特別な利害関係を有する理事は、議決権を行使することが認められないとしても、審議に参加することはできるのでしょうか?
会社法第369条第2項は、取締役会決議の対象となる議案について特別な利害関係を有する取締役は、議決に加わることができないと規定しています。これは、標準管理規約(単棟型)第53条第3項と同趣旨の規定ですが、その解釈においては、議決のみならず、審議に参加することも認められないと解する立場が学説上の多数説とされていますが、審議参加を肯定する学説もあり、対立しているようです。
しかし、いずれの立場に立つとしても、特別な利害関係を有しない取締役の過半数の決議により、特別な利害関係を有する取締役の退席を求めることも、出席の上で事情説明を求めたり、意見陳述の機会を与えたりすることは可能であると解されています。
ですから、これと同様に、特別な利害関係を有しない理事の過半数の決議により、特別な利害関係を有する理事の退席を求めることも、出席の上で事情説明を求めたり、意見陳述の機会を与えたりすることは可能であると解されますので、理事会において、よく協議して決定すべきでしょう。
但し、特別な利害関係を有する理事が弁明の機会の付与を強く求めるような場合には、できる限り、その機会を与えるほうが穏当な対応であると言えるでしょう。

